初心者からでもチャレンジしたい自作IoTデバイス4選【2021年版】

IoTデバイス micro:bit M5Stack Raspberry Pi Obniz
更新日:2021/05/06

インターネットに繋がるスマートスピーカーの登場により、IoT機器も生活の一部として身近に感じられる時代になりました。
また近年、扱いやすいマイコンボードが普及してきたことで、自分でIoTプロダクトを作ってみたいという熱が高まってきています。
こうした時代背景を受けて、初心者からでも挑戦してみたい自作IoTデバイスを4つ紹介したいと思います。

1. micro:bit(マイクロビット)

『micro:bit』は2015年にイギリスBBCが中心となって開発された、手のひらサイズのマイコンボードです。
イギリスでは11歳〜12歳の子供全員に無償で配布され、教育用マイコンボードとして定番化しています。
日本でもプログラミング教育必修化を受けて学校での導入が広がりつつあり、その人気もあって品薄状態になっているようです。
マイコンボードには、25個のLED、2個のボタンスイッチ、スピーカー、マイク、明るさセンサー、加速度センサー、温度センサー、コンパス、Bluetooth、USBポートが搭載されています。
ただし、通信機能がBluetoothのみであるため、IoTデバイスとしてインターネットと接続するにはWifiモジュールの拡張が必要です。
教育用に開発されたこともあって非常に扱いやすい設計になっており、Webブラウザでプログラムを開発し、USBケーブルでPCと接続してプログラムを転送できます。
プログラム開発ツールとして、指示の書かれた小さなブロックをマウス操作でつなぎ合わせる「ビジュアルプログラミング」を採用しているのも面白いですね。
ビジュアルプログラミングのブロックの実体は「JavaScript」なので、慣れた人なら直接JavaScriptで開発することもできます。
また、「MicroPython」にも対応しているので、ビジュアルプログラミング→JavaScript→MicroPythonといったように、ステップアップしながらプログラミングを学習していけそうですね。

2. M5Stack(エムファイブスタック)

2017年に中国・深圳で誕生した『M5Stack』というマイコンボードは、基板剥き出しのデバイスとは違って、5センチ角のボックスに基板が入ってディスプレイ付きというスタイリッシュなIoTデバイスです。
小さなディスプレイ付きというのが最大の売りで、ボックスにウォッチバンドを付ければそのままウェアラブル端末になるというキャッチーさがありますね。
M5Stackは「ESP32」という BluetoothとWifiの通信機能が搭載されたマイコンボードがベースになっているため、IoTの肝となるインターネット接続が簡単に行えます。
センサーとしてはプログラミング可能な3つのボタンが搭載されている他、専用の拡張モジュールを積み重ねていく(Stackの名前の由来はこれ)ことができます。
プログラミングには、C/C++をベースとしたArduino言語の「Arduino IDE」の他、M5Stack社が提供する開発ツール「UIFlow」が使えます。
UIFlowでは、ビジュアルプログラミング言語の「Google Blockly」と「MicroPython」をサポート。
micro:bitと同様、ユーザーのレベルに合わせてプログラミング言語が選べるのは嬉しいですね。
M5Stackには様々なシリーズがあります。
  • M5Stack Basic
  • M5Stack Gray(9軸センサー)
  • M5Stack Core2(タッチディスプレイ)
  • M5StickC(スティック型)
  • M5StickV(スティック型AIカメラ)
中でも注目したいのが、AIカメラとなる『M5StickV』
高性能なニューラルネットワークプロセッサを搭載しており、デバイス単体でディープラーニングを使った画像認識が可能となります。
スティック型の親指サイズのデバイスで、画像認識AIを扱うことができるのは驚きですね。
ただし、M5StickVにはWifi機能がないので、 IoTデバイスとして使うにはM5StickCなどと組み合わせる必要があります。

3. Raspberry Pi(ラズベリーパイ)

自作IoTデバイスとして最も有名な『Raspberry Pi』は、2012年にイギリスでRaspberry Pi財団によりIT教育用としてリリースされました。
「イギリスで」「IT教育用として」という背景は、micro:bitと同じなんですね。
micro:bitとの違いは、Raspberry Piは有線LAN・Wifi機能が搭載されていてネットワーク通信に強いこと、そしてLinuxOSが搭載されていることです。
micro:bitが様々なセンサーを標準搭載していてハード寄りなのに対し、OSを搭載しているRaspberry Piは「シングルボードコンピュータ」という小さなパソコンという位置付けで、OS上に様々なソフトウェアを組み込むことを得意とします。
そのため、教育や趣味の範囲を超えて、仕事のツールとして活用されることも多いです。
プログラミング言語としては、公式OSのRaspbianには「Python」とビジュアルプログラミング言語「Scratch」が標準搭載されているので、そこから始めるのもいいでしょう。
それだけではなく、LinuxOSでサポートしているプログラミング言語ならば対応しているので、例えばLinuxOSに.Net Coreをインストールすれば、C#で作ったプログラムも動かすことだって可能です。
Rasberry PiもM5Stackのようにいくつかの種類がリリースされていますが、
高スペックのものなら最新モデルの『Raspberry Pi 4 Model B』、小型サイズのものなら『Raspberry Pi Zero W』が人気です。
最近では、キーボードと一体となった『Raspberry Pi 400』が発表され話題となっています。

4. Obniz(オブナイズ)

『Obniz』は、”すべての人にIoT開発の機会を”というコンセプトで2018年に生まれた、日本発のIoTデバイスです。
ESP32マイコンボードに小型ディスプレイが載せられた形状で、M5Stackとベースが似ていますが、Obnizの方が基板剥き出し感は残っています。
最大の特徴として、機器のIO制御をクラウドのAPI経由で行える仕組みが整っており、「ハードウェアのAPI化」を実現しています。
ハードウェアをオブジェクト化してクラウド経由でPC・スマートフォンから一元管理することで、IoT開発の煩雑さを解消。
これにより、開発者はクラウド側とクライアント側のソフトウェア開発に集中できるというわけです。
Webブラウザから操作して機器を制御するプログラムをHTMLとJavaScriptで組めるので、Web開発者とも相性が良さそうです。
また、学習用としてビジュアルプログラミングにも対応しています。
ハードウェアのAPI化を実現する「ObnizOS」というソフトウェアと「Obniz Cloud」というクラウドサービスが特徴的なIoTデバイスですが、ObnizOSは他のESP32マイコンボードやM5Stackシリーズにもインストールできるので、ESP32系デバイスでObniz Cloudが利用可能になります。
Obniz本体は6000〜9000円と少々価格が高いので、より安価な1000円前後のESP32-DevKitCや2000円前後のM5StickCとObnizOSを組み合わせてみるのも面白いですね。

最初の自作IoTデバイス、何を選ぶ?

これからIoT開発を学ぶとしたら、最初に選ぶ自作IoTデバイスとして何がいいでしょうか?
売りとしてる特徴も違えば価格帯も違うので、その答えは「人それぞれ」だと思います。
拡張次第で何でも出来そうという点では「Raspberry Pi」が一番の候補にあがりますが、何でも出来るが故に何を作ったらよいのかわからなくなる可能性もありますし、温度センサーやコンパスといったセンサー機能を使ったプロダクトを考えているならば、各センサーが標準搭載されている「micro:bit」から学ぶのが近道かもしれません。
私個人の好みで言うと、ディスプレイ付きの「M5Stack」シリーズや「Obniz」がキャッチーで興味をそそられます。
全部を試すことができるとしたら、誕生した歴史順にRaspberry Pi→micro:bit→M5Stack→Obnizと辿っていくのもいいですし、よりキャッチーな順でM5Stack→Obniz→micro:bit→Raspberry Piと試していくのもいいですね。
お子さんがプログラミング学習用に始めるとしたら、今回紹介した全てのIoTデバイスでビジュアルプログラミングを対応しているので、どれを選んでも導入がスムーズでしょう。


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