台湾及び米国から感じるITの方向性(2/4)

米国のキャッシュレス事情

先日、弊社社員(以下A氏)が米国に2週間ほど滞在する機会があり、ITの活用とIT業界に従事する人々に大きくカルチャーショックを受けたと聞きました。

MONOLITHのゲームクリエイター、元IBMエンジニアなどとの面談もあったそうですが、今回は割愛しA氏が実体験したIT活用に絞ります。

A氏は一体、どのような事(物)に衝撃を受けたのか?
A氏からのヒアリングの中から、クレジットカードとUberについて以下に紹介します。

まずは、米国のキャッシュレス事情(主にクレジットカードとそのインフラの普及)について紹介していきます。

近年、日本では「キャッシュレス化」が叫ばれていますが、実際にはまだまだ現金が主流です。
一部で進みつつある「ICカード」による決済については、ソニー開発のFeliCaが主流であり、世界で流通するMIFARE(マイフェア:非接触ICカードの国際規格)はセキュリティ面から、決済には日本国内でさほど流通していません。

また「スマホアプリ決済」については、普及が進みつつありますが、システムの構築面でのセキュリティの脆弱さ、ギャランティ制度の未確立などが指摘されています。

一方でクレジットカードについては、市民権を得、充分に日本国内では普及していると私は感じていました。
しかし、米国での普及度はその比ではなかったとのことです。

A氏が今回の訪米で真っ先に目についたのはクレジットカードとそのインフラの普及であったそうです。

■インフラの普及度

米国ではレストラン、ファーストフード、一般スーパー、ファーマシー、デパート、ホテル、タクシーから、果てはコンビニ、ガソリン給油、交通券売機、に至るまでクレジットカードでの支払いが主流で、ほとんどの市民は現金を多く所持していません。
また少額決済もクレジットカードが主流だそうです。

ファーストフード、コンビニ、ファーマシーなどでは、日本とさほど差異はなく難なく利用できます。
レストランではチップ文化の名残でサインアップの前に、自身でチップを決めて記載するため、手順がいまいち不明で少々手間取ることになりますが、A氏は「慣れればなんてことはない。」と。

余談ですが、店によってチップの表記が違い「Tip(チップ)」と「Gratuity(グラテュイティ)」の表記で、当初はいささか戸惑ったとのことです。

このように、A氏は日常生活においてクレジットカードが使用できない場所を探す方が難しかったと言っています。

taxi
クレジットカード端末:
イエローキャブ(タクシー)

LAの地下鉄
クレジットカード端末:
LAメトロ(ロスアンゼルス地下鉄)

コンビニ
クレジットカード端末:
コンビニエンスストア

ファストフード
クレジットカード端末:
ファーストフード

スーパーマーケット
クレジットカード端末:
スーパーマーケットレジ(セルフレジ)


■ガソリンスタンドでの決済について


ガソリンスタンド
A氏は、米国での滞在中にガスステーション(ガソリンスタンド)を利用することもあったそうですが、給油機でのクレジット決済は操作パネルが超難解で、「ここだけは併設のショップで支払うことにした。」と。

A氏から聞くところの、ショップ支払いは以下の手順で、とても煩雑だったとのことです。

店員に「20ドルお願い。ポンプは6番です」と自分の車を停めているポンプ番号を伝え、クレジットカードで20ドルを決済する。(この時に使用分20ドルのレシート受取る)
次に給油機で給油を行う。
例えば、15ドルで満タンになれば、5ドル余ることとなるため、その場合は再びショップへ行きポンプナンバーを告げる。
レジでお釣りの5ドル(現金)とレシートを受け取る。(2枚目の給油量と釣銭記載のレシート)

クレジットカード決済でお釣りはキャッシュ。結果的に不要な現金が手元に残ることになり、A氏は不満が募ったと言います。
但し、現地の人々は全員が給油機でのセルフ決済です。


■2週間の滞在で使用した現金は?

では実際にA氏が今回の訪米で使用した現金はいくらだったのか。

A氏が出発時に成田でドルに両替したのは10,000円。
もちろん米国での両替はなし。
2週間後の帰国時には35ドル(当時のレートで、約4,000円)超残っていたとのことです。

ということは、2週間の米国滞在で、利用した現金は僅か6,000円ほどであり、どれだけキャッシュレス化が進んでいるかお分かりいただけるのではないでしょうか。

A氏は「キャッシュを使ったのは、ホテルのチップが殆どであった。」と、端末設置がどうしてもできないところ(ホテルスタッフ)のみで、逆にそれ以外の整備はほぼ100%であることの証左でしょう。


■なぜそこまで普及している?

このように米国でのキャッシュレス決済については1$前後の少額でもクレジットカードが主流であり、 A氏もドラッグストア(日本のコンビニの様なもの)でのミネラルウォータ一本でもクレジットカードで支払ったと。

日本のようなチャージ型ICカード、プリペイド型カード、スマートフォン決済、キャッシュなどでの決済は米国で、殆ど目にしなかったとのことです。
(一部、LA地下鉄のTAPカードはチャージ機能があり、TAPカード購入はクレジット対応であるとのこと)

このようにキャッシュが市中に殆ど出回らないのは、一面では犯罪が関係しているとのこと。
キャッシュや媒体そのものにバリューがあるプリペイドなどは、盗難時にギャランティもなく、一般的には嫌われる傾向にあるのでしょう。

しかし、クレジットカードであれば、決済時に必ずPIN-CODE (日本では暗証番号)若しくはサインアップが必須であり、
紛失時や盗難時(スキミング含め)にはイシュア(クレジットカード発行会社)の保険が適用され、数日(場合によっては数週間)のギャランティがあります。

このようにスキームと信用が確立されており、この点が現金とは大きく違い、決済の安全性と確実性が保たれているのではないでしょうか。
また店側も、現金保有率が下がることで強盗などの被害低減、入金の確実性などが担保されます。

更に加盟店決済手数料について、日本では2〜8%(業種、規模で大きく変化)ですが、米国では一律0.3%前後であり、店舗側の導入への動機付けが容易であることも広く普及してきた要因ではないかと思われます。

こういったクレジットカードの信頼性、低手数料、補償などの充実が背景となり、インフラの普及と国民の認知度と利便性に拍車がかかり、更にシステムのネット網も発達してきたと考えられます。

日本では、平均5%の加盟店決済手数料、高価な端末(10万円以上)、CAFISとJCNという利権構造のネット網、根拠のない加盟店審査などがハードルとなり、普及が遅れていたのとは対照的です。

このように、媒体は別としてセキュリティ面、運用面(歴史的背景もあるが、ここでは割愛)からクレジットカードに集約され、且つ目的としてのIT利用、展開がはかられてきました。
欧米の民族性でしょうか、思考回路の違いを垣間見る思いです。

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